2011年8月8日月曜日

お盆 その2 「お盆のこころ」


お盆のこころ

わが国の仏教では、お盆の行事の始まりを『盂蘭盆経』に由来するとしています。

これには「神通第一」と称された目連尊者が、亡き母が地獄に堕ち苦しんでいるのを見つけ、
母を救う方法をお釈迦さまに相談しました。
お釈迦さまは修行中の修行者がその修行のあける日にご馳走をささげなさいと、
教えました。目連尊者は教えの通りにしたことにより、母は救われたという逸話があります。

ここ京都府木津川市鹿背山では、
毎年お盆を迎える8月は何処のお家もご先祖様を迎える準備に追われます。
まず8月1日(最近では1日を中心とする前後の日曜日になりました)村中一斉に出て
墓掃除に始まり、7日の墓まいり、13・14日の棚経そして盆おどり、16日精霊流し、
19日の西念寺での盆施餓鬼会などと行事が続きます。

これらの行事はそれぞれのお家の先祖の精霊(オショライさんと呼んでいます)が
年に一度このお盆に帰ってきて、家族とともに過ごす時期として、
ご先祖を大切におまいりする古来よりの習慣と、仏教行事が一つになって、
長い年月のなかでつちかわれたご先祖さまを大切にする、
この地域の温かい生活習慣となっています。

鹿背山には昔からそれぞれのお家で、お舅さんからお嫁さんへ、
お嫁さんから次のお嫁さんへと、代々伝えられてきたお盆の行事や、
精霊(オショライさん)へのおもてなしなどがありました。

幸いにこれらに関する十年余り前の調査報告がありますので紹介します。

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盆の行事
8月1日 墓掃除(今、前後の日曜日)

8月7日 墓参り。大きな木のところでオッサン(住職)がおがんでくれる。
ウメタハカ(埋葬墓)でおがむ。

8月12日 木津の盆市がたつ。
蓮の実・槙・百日草・ホーズキ・ビシャコ・シキビ・菊の花・菓子・アサガラを購入する。

8月13日 小麦の藁でオショライさん迎えを用意し、家の外の川や道路の近くに、
砂を円く台状にしたところに、夕暮れ時になってこれに線香を立てる。
(オショライさんの拠り代となる)
夕飯を食べてから小豆(ササギのこともあり)のオカイサン(お粥のこと)をお供えする。
新仏のタナ(アラタナとも云う)の家はこの日にオッサンがまいる。

8月14日 ボタモチ。キナコを付けたもの。
オッサンが参る。
オチャトーをする。手がだるくなるまでオチャトーをしなければならない。
ナスビアエ・ドロイモ・ゴボウ・みそ汁。
夜食にソーメンを作る。
御飯を作って、ゼンコージさんに参る。弁当にする。

8月15日 朝、オカイサン・漬物
昼、カボチャ・オアゲ・ゼンマイ(炊いたもの)
晩、オカイサン。

8月16日 朝、オカイサン。
供え物を流すところへ流す(今は川が汚れるので木津町がまとめる)。
蓮の葉に桃・梨・ブドウ・薩摩芋・なすび・胡瓜・御餅・箸をつけて流す。
タイマツを持ってゆく。

資料:『関西文化学術研究都市開発地区緊急民俗調査報告書』に一部追補
(京都府立山城郷土資料館 平成2年発行)

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興味深いのは13日から16日にかけてのオショライさんへのお接待です。

朝食にお粥を食べることはこの地の古くからの習慣でした。
炊き立ての白い御飯はご馳走ではありました。その他で生産される食材を使って
三度の食事の接待を、また送り出す16日には、桃・梨・ブドウ・サツマイモなど
この時期収穫できる品々をお土産にお供えするなど、帰ってきたオショライさんに
精一杯のおもてなしをしていたことが想像できます

「よくお盆のオショライさんに何をお供えしたらよいのかわかりません。」
と質問されることがあります。答えは、昔の献立を再現してお供えすることが
大切なのではなく、お迎えする側がオショライさんを思いやる心で接することこそが
大切ですよと、この報告書は教えてくれています。

(京都・鹿背山西念寺住職)
平成17年8月発行「ひかり」no.546号掲載原稿より



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